一枚のモノクロの写真がある
会ったことのない私の叔父だ
ひとつの命が19歳で途絶えた
長身で色白の面立ちをした青年だ
オホーツク海に沈んだという叔父
いまあなたは
安らかな眠りを
眠っているだろうか
あなたの死の記憶が遠くに過ぎてゆき
わが家にもあなたのことを知る者が少なくなった
あなたはさみしい笑顔で
忘却の道を歩いてゆく
だけど
わたしは呼びかける
なぜ死なねばならなかったのかを
教えてくださいと
記憶がみんなから遠ざかるとき
それはまた
音もなく私たちに近づいてくる
いつだって
戦争はそうやって近づいてくる
八月十五日
私たちは眠っていて
覚めて苦しみにもがいているのは
叔父さんあなたたち
どうか行かないで
ここにいて
なぜ死なねばならなかったのかを
私たちに教えてください