ふるさとの夏

  ふるさとの夏は

  遠い思い出のなかにある

 

  汗がしみこんだ

  古びたランドセルを背負って

  姉と駆けた帰りみち

 

  流れをせき止めて

  おやじがつくったどん淵に

  おれは姉と弟といた

 

  流れのなかで

  おばあちゃんが育てた

  スイカが踊っていた

 

  俺たち三人は石に腰かけ

  母が切ったスイカに喰らいついた

 

 

  あの川は

  いまも流れているか

 

  日の暮れるまで遊び

  ウナギをかけた

  あの石垣は

 

  どこまでも透きとおっていた空は

 

  おばあちゃんも

  おやじも

  母も

  もういないが

 

  八月には帰ろうと

  久しぶりに

  姉からの電話

 

  ふるさとの夏は

  遠い思い出のなかにある