墓石のまえに立つと

 かすかに風が通った

 あそこに行ってみるわ

 おれは

 そう妹に告げた


 夏が終わろうとして

 雲ひとつとしてない

 生い茂った草むらをぬけ

 妹と二人で越えた

 雑木林の山の道


 岩だらけの海岸で

 泳ぎが達者な妹は

 沖の方まで出ては

 おれを心配させた

 あの夏の日


 ふるさとの

 この小さな入り江に

 あの日のように

 風が通りすぎ

 波がよせる


 妹が逝ってから

 雑木林をぬけ

 おれは初めて

 この海岸に立った

 笑いながら泳ぐ

 妹の声を聞きたくて