君の瞳

 富士山には 行ったことがない

 だから そんなに聞いてくれるな


 君の瞳に富士山が映っているのがみえる

 真っ青な空に映っている


 座席の横で 君は楽しそうに外を眺めている

 その美しい身をかがめたり 伸びをしたりする

 

 その膝で休ませてほしいから

 君の瞳をとらえようとする


 吹く風のおとや 野の草や 

 空を飛ぶ鳥のように

 

 君は自由に生きている

 そんなことを考えたことはないかい


 ぼくの中の平安が消えて ときは過ぎる

 過ぎた日月を思い 車窓を過ぎる景色をみる


 あの野の草にでも 伝えてみたい

 どんなにか みずみずしい君の姿かを


 富士山が過ぎてゆく

 だから ぼくは君に言おう


 君の瞳は もうほかを探して動いているね

 そんなに退屈そうに ぼくを見ないでくれよ